春先の夜、俯きながら覚えたての英単語を頭の中で

「I'm not worth to live... I'm not worth to live...」

とぶつぶつぼやきながら街のローカル鉄道を待っていた。塾の帰り道であった。

時は1999年、誰もが夢見た世界滅亡の時であった。そんな胸弾むような中、私は大学の受験勉強を黙々としていた。街中の外れにはグラフィティで溢れるようなそんな時代だった。学校を終え、閑散とした水島臨海鉄道に乗って塾へ行く。そしてのっぺらぼうのように表情を無くして家路へと着くのであった。そんなルーティーンの毎日だった。こんなものが延々と続くなら毎日録画してそれを再生してても大差ない。ああ、そうしてくれよ。そう思っていた。

そんな夜の電車の中から見える、薄暗い電灯で照らされた低いビルの屋上にある小屋が何かしら私には気になっていた。なんだろう?それはある意味の秘密基地のようなものみたいな感覚だからであろうか?そんな香りがする、冒険心漂う非日常が私の心を慰めてくれていた。電車からではほんの十数秒間であった。

当初色々なストレス要因から神経症を患っていた私には心の癒しであった。この頃はまだ精神科とはキチガイの行く、入院したらもう出てはこれない人外の場所という認識が世間一般であり、誰にも相談することもできず、当然病院なんかにも行けることなんてできなかった。そういうわけで私はひたすらに「I'm not worth to live... I'm not worth to live...」とつぶやきながら歩いているのであった。

to be continued...

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