Contrast Black 1

一棟の家屋がごうごうと燃える。それをしばらく見てから背を向けて男は歩きだした。強く握った拳からは血が流れていた。

燃えているのは男の愛した女の家だった。女は自殺だった。その現場の一部始終を見ていた男だった。しかし男は逃げた。何故なら前があったからだ。妙なうしろめたさがまとわりつき、男は気持ちが悪かった。

3年前

傷害の罪で投獄され、それから釈放されて新しく道を正そうとしていた。しかし一度そういう罪を負った者のブランクなどの埋め方が難しく途方に暮れ、毎朝、水島中央公園でパンくずを鳩にやっていた。すると苦情があがったのか、警察官がやってきた。

「あなた、鳩にエサをやらないでください。公園の使用者から苦情がでてます!」

と、女性の警察官が男を咎めにきた。

「え?いいじゃないですか。子供たちもこんなに喜んでるし。それに鳩にエサをやったらいけない法律でもあるんですか?」

「あります!鳥獣愛護法って法律が!ところであなたのお名前は?」

「山本大悟です。」

「職業は?」

「無職です。」

「こんなに天気がいいと働きたくないのは分かりますが、働かないと憲法違反ですよ?」

「お巡りさん、俺、前があるんです…。」

「あ、そうなの…。何をやったの?」

「傷害です。喧嘩で相手の目を失明させちゃって…。」

「そうなのね…。やせ細ってるけどちゃんと食べてるの?」

「ここ数日はうどん一袋を三回に分けて食べてます。」

「それじゃあ体に悪いわ。山本さんは明日の昼もここへ来て下さい。私がお弁当を作ってきます。」

「ええぇ!?そんなのいいです!」

「いいから!ちゃんと明日来てね!」

そういって女警官は立ち去った。

「名前でも聞いとけばよかったな…。」

山本は豆鉄砲を食らった感じに啞然とした。

そして次の日の昼

「山本さん、ちゃんと来てくれたんですね!お弁当持ってきましたよ!」

「あ、ありがとうございます。わっ!凄いお弁当!」

弁当の中は幕の内弁当のように色んな種類のおかずが入ってた。

「いやいや、ところでお巡りさんのお名前はなんですか?」

「私は桜井日奈子です。交通課をやってます!」

「あぁ、そうなんですね。それでなんで私のようなものにこんな施しをしてくれるんですか?」

「警察官は弱者を助けるからよ。あなたは加害者だったかもしれないけど、今は社会的弱者。だから私達が助けないといけないの。」

「そうですか…。私は少し泣きそうです…。こんな私に…。こんな…。」

「そう思えるなら前を向いて歩きましょう。あなたの就職が決まるまでここにお弁当を持ってきます。だから鳩にはエサをあげないでくださいね。」

「ハハッ。分かりました!」

これが俺と彼女との出会いであった。

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