そして土曜日の夜
「それじゃあ、大悟さん、行ってくるね。」
「ああ、わかりました。行ってらっしゃい。」
バタンとドアが閉まり、山本が一人になった。桜井は一旦家に帰ってからどこかに行くようだ。
「やっぱり日奈子さんは男がいるんだろうな。俺のことが好きだと言ってもやっぱり不釣り合いだもんな。そっちのほうが幸せになれる。うん。それでいい。」
妙にしっくりくる山本だった。久々に桜井がいない夜。寂しい感じもするが、緊張感もないからほっとする感じもする。
「なんだかソファーが欲しいな。そういえばネットで段ボールでソファー作ってたな。真似してみるか。」
そう思い立って段ボールをもらいに近くのスーパーまで行ってきた。
「おお、沢山あるな。これだけあるなら作れるだろう。さて、持ってかえるか。」
山本は段ボールを紐で縛り、そこからハサミとカッターとノリとガムテープを百均で買って帰った。
「さて、準備はできた。さてyoutubeでも見て作るか…。」
ことこういうことには何故だか器用な山本である。すぐに出来上がった。
「強度はどうかな?うん。大丈夫だ。これから日奈子さんもこれに座れるな。あとは布地があればいいんだけど。それはまた明日探すか。さて、今日はもう眠いや。寝よう。」
次の日
「ん?10時?寝過ぎたか。日奈子さんに怒られそうだな。さ、顔洗って歯磨きしよう。」
窓を開けて伸びをした。今日もなんだか爽快だ。あの味気ない食生活から抜けて毎日桜井の手料理を食べているせいか体調がすこぶるいいのである。
「さて、あの屑鉄屋に応募しよう。」
就職活動にも意欲が湧く。それもこれも桜井の援助のおかげである。桜井には感謝の念しかない。それを伝えようと昼を待ち遠しくしていた。
そして昼がきて、桜井がやってきた。くるや否や、
「大悟さん、抱いてください。あなたに抱かれないと私はどうかしてしまいます。」
「何かあったんですか?」
「何も聞かないで。」
「日奈子さんを抱くことはできませんが、抱きしめることならできます。」
「じゃあ強く抱きしめて。」
と、作ったばかりの段ボールのソファーになだれ込んだ。そして二人は激しくキスをした。
「日奈子さん、一体何があったの!?」
と驚いた様子で聞く山本
「それは聞かないで。」
と返す桜井。
「そうですか。日奈子さんモテそうだから何かしら大変なことがありそうですもんね。」
とその場を曖昧にするように山本が言うと、
「大悟さんにとって私ってそんな存在でしかないの?そんな簡単なものなの?」
「そ、そんなことはないですよ!」
「じゃあ何?私が知らない男とどうなってもいいわけ?」
「そ、それは…。」
「はぁ。ばっかみたい。昼食と夕食の買い物行ってくるわ。」
そう怒りながらも山本から離れられない桜井でもある。山本も山本で煮え切らないものである。
しばらくして桜井が帰ってきた。
「はぁ。同僚に会ったわ。ここが勘づかれなければいいんだけど。取り合えず昼食作るわね。」
「ありがとうございます。(俺はヒモだな。)」
「何か言いました?」
「いえ、何も。」
昼食を終え、
「それじゃあ、私、仕事に戻るから!」
「わかりました。ありがとうございます。」
そう言って桜井は仕事に戻った。
後日の昼。いつも通り桜井は山本の家に来ていた。そしていつも通り昼食を済ませ、帰って行った。
山本は外で何が起きていたかは知らなかった。

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