そして土曜日
「いやぁ、嬉しいな!桜井さんとお食事なんて!」
「そうですか?私なんかよりその辺にいい人いくらでもいるじゃないですか。」
「そんなことありません!さ、ここですよ。備中倉敷葡萄酒酒場。」
「わぁ。こじんまりしてるけどオシャレなお店ですね。」
「そうなんです!オーナーのミョンさんが美味いワインと美味い料理を提供してくれるんです!予約しないと料理は食べられないんですよ!」
「へぇ。そうなんですか。」
「まぁ、入りましょう。マスター!予約のノブです!」
「おお、ノブか!久しぶり!あれ?そこの可愛い子は彼女か?」
とワインバーのマスターが出てきた。
「いやいや、職場の先輩ですよ!ミョンさんの店がいいから紹介しようと思いまして。」
少しきょどりながら話す早川。
「お世話になります。」
と小声の桜井。
「白、赤、泡、どれがいい?」
とマスターが言ってきて、
「泡がいいです。」
と早川
「泡ってなんです?」
と桜井が尋ねると
「ああ、泡ってのはスパークリングワインのことですよ。」
とマスターが言った。
「まずはアペタイザーからね。それからグラタン、ローストビーフと出していくから。」
と重ねて言った。
「ちょっと緊張します。」
と桜井が落ち着かない様子だった。早川はというと、こういうオシャレなお店に女性を連れてきて得意げになっている。
お酒が入ってきて、二人は職場のことなどを楽しそうに話した。また、オーナーのミョンが二人にちゃちゃを入れてからかうから余計に盛り上がった。
「あ~、桜井さん楽しかったよ。マスターもありがとう!」
「私も楽しかった!ミョンさん、トーク面白すぎる!」
「ははは!二人ともいい感じだね!付き合っちゃいなよ!」
「もー!マスターは!」
などなど談笑が終わりまで続いた。
「それじゃ―マスター!」
「あいよー!いつでもおいでー!」
と店を後にした。
「これからどうする?」
と早川が言うと
「そうね。もう酔ってるからそろそろ帰らないと。」
と桜井
「あ、桜井さん前髪にゴミがついてるよ?」
「え?どこどこ?」
「俺が取ってあげるよ。」
そう言って早川は桜井にキスをした。すると桜井は早川を突き放して
「早川さん…。まだ早いよ…。」
「そ、そうだね。まだ早いよね…。ごめんごめん!じゃあタクシー呼ぶから!」
タクシーを呼ぼうとする早川の後ろ姿に桜井は急に抱き着いた。
「桜井…さん?」
「何も言わないで…。」
そう言って二人は近くのホテル、タイムゾーンへ行った。
情事を済まし、疲れた二人
「桜井さんって、本当に淑女だよね。でもあの時の引き止め方は本当にびっくりした。」
「淑女なんかじゃないですよ。ただなんとなく寂しくて…。」
「桜井さん、これはもう付き合ってるってことでいいんですよね?」
「…。心と体は別です…。付き合うのは少し待ってください。」
「ふぅ。そうですか。いつまでもお待ちします。」
そう言って一晩の恋は終わりを告げるのであった。

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