「日奈子さんはこの中!?日奈子さんはどこにいるの!?日奈子さーーーーーーーん!」
一棟の住宅がごうごうと燃えている。1人の刑事は消防隊より前に進もうとするが、それを憚られた。
どんどんと焼け落ちていく家屋。絶望にひしがれる一人の刑事。涙は燃える炎で金色に輝いていた。
先に消防車が着き、パトカーが着くときにはもう手遅れの状態だった。完全に燃え広がった火は周りも巻き込んで燃えた。水島の古い住宅街なら火の手が早いのは明らかだった。一晩かけて炎は鎮火した。
焼け跡から炭化した女性の遺体が見つかった。それを見つけたのは一晩中、家が燃えるのを見ていた早川信行であった。遺体の女性は桜井日奈子だと察しはついた。その姿は生前の影を見るものはない。
桜井は水島警察署の交通課の女性であった。早川とは噂が上がるような仲の良い二人であった。
3年前
「ここ、水島警察署の刑事課に配属になりました、早川信行です。よろしくお願いします!」
「お!若いの!そんなに緊張せんでええぞ!ここ水島は治安がわりぃゆうてもそんなには悪くねぇ。じゃけぇそんなに張り切らんでええぞ!」
「はい!ご恐縮です!」
「ハハハ!若けぇのぉ!」
早川はメラメラと闘志を燃やしていたが、あまり大きな事件のない所で、次第に退屈さに飽きてきた。そんな中、パトロールをしていて市役所横の通りの一時停止を甘く入って行ったら先輩刑事に
「バカ!そこはちゃんと止まれ!」
と言われ、すると
「そこの黒いセダンの車、止まりなさい!」
と女性の声で交通課の警察官に捕まった。
「ほら言わんこっちゃない…。」
「お兄さんたち、急いでたのかな?」
と女性警官が話をかけてきた。なので
「我々はこういう者です。」
と警察手帳を見せた。
「あわわわわ!これはすみません!でも…交通違反は交通違反です…。」
「まぁ、今回は多めにみてやってくれ。警察官が警察官に捕まったってなると安いスキャンダルでも面白くないだろ?」
と先輩警察官が言った。
「わかりました。ここはないないにします。新人ドライバーさん、気を付けてね!」
と、ここが早川と桜井の初の出会いであった。

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