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一夜明け、早川はただボケーっと自分の部屋から空を見ていた。今日は非番であった。

「桜井さんを確かに抱いたのに、この感触のなさはなんなんだろう?とても空虚な感じだ。私は乾いている。砂漠の中で水を探しているように。追いかけても追いかけてもそれはただの陽炎でしかない。いつになったらオアシスは見つかるのだろうか。はぁ。詩人のようになってもまた虚しい。恋することがこんなに苦しいなら。恋などいらぬ!っていうサウザーさんにでもなりそうだな。」

 早川にとっては恋愛とはただの人生のスパイスでしかない。それが運命の分かれ道などとは思ったりはしたことはない。今までも女性関係は普通にあり、普通に別れを知っていて、この恋もただ人生での刺激の延長上に過ぎないのだった。しかしそれは至極普通のことであり、それが悪いわけでもない。人の出会いと別れは一期一会にしか過ぎない。それが普通の人にとっては当たり前のことである。時には火傷するような恋もあるだろう。しかしその痛さもそのうち治る。そうやって人は強くなる。早川になんの落ち度があるわけでもなく、ただ、そうやって恵まれた環境で生きてきただけなのである。それを妬み嫉むのは人生でいじけた負け犬の遠吠えだろう。

「しかし暇だな。ランニングがてら桜井さんの家の周辺まで走ってこようかな?って、ストーカーじゃん!でも気になるな。ちょっと行ってこようかな?」

と早川は桜井の家の近くまでランニングをすることにした。

桜井の家はというと、持ち家である。両親が早くして他界し、それを受け継いで住んでいる。1人で住むには広すぎるが、本人曰く自分の家がなくなるのは心苦しいとのことで家を売却せずにいるらしい。ちなみに桜井は一人っ子で家督を継ぐのは日奈子しかいなかったということだ。

桜井の家は中畝辺りである。早川の寮からは2.5kmぐらいである。それくらいの道のりだと刑事なら余裕綽々である。

走り始めて、少し汗をかいてから気持ちよくなり、すぐに桜井の家周辺にたどり着いた。桜井の家を何故知っているかというと、職権乱用である。本気でストーカーである。

「確かこの辺りだな。あ、多分あの家だ!」

近くまで行ったが、桜井の車はなかった。

「どこに行ったんだろう、桜井さん。かと言って家のインターホン鳴らすわけにもいかないしな。このまま寮に帰るか。」

と走って寮近くの水島商店街付近までやってきて、

「そういえばこの辺りに24時間営業の赤のれんって店があったな。ちょっと行ってみるか。」

とそこに行こうとすると、桜井の車が前を横切った。

「あ!桜井さんの車だ!おーーーい!ダメだな。ちょっと走って捕まえるか。」

桜井の車が赤信号で止まっている時に早川が窓ガラスをノックし

「桜井さん!」

と声をかけて、桜井はびっくりして

「ひゃ!早川さん!?」

と口から心臓が出そうな顔をした。この時桜井は山本の昼食、夕食の買い物に行く途中だったからだ。幸い山本と一緒じゃなかったことは不幸中の幸いだった。

「昼間にこのさびれた商店街付近で何をしてらっしゃるんですか?」

「ああ、いえ、以前まで風俗などがこの辺にまであったでしょ?それが昼間にもやってるのかな?なんて気になって。っていうのは冗談でこの辺の情景が好きなんですよ。」

「ああ、この辺は確かに昭和レトロ感がありますね。それに以前まで風俗もありましたね。非番の日まで仕事熱心なんですね!ますます惚れ直します!」

「はは。そんなんじゃありませんよ…。」

と語尾をごにょごにょと濁し、ばつの悪そうにして、

「ちょっと私急いでいるので、それでは!」

「あ、はい…。お気をつけて…。」

キョトンとする早川をしり目に桜井はその場から逃げた。

しかし早川は刑事の感ですぐに分かる。それが何かを隠していることを。

「なんでそんな嘘をつかなきゃならなかったんだろ?もしかして彼氏でもいるのか?この辺に。う~ん。気になる。しかしそれを見つけたところで俺は幸せになるか?それはないな。ただ嫉妬に狂う馬鹿野郎だ。そんなことよりも桜井さんの気持ちを汲んでより一層私と居たいと思わせるほうが私らしいと思うのでは?そうだな。うん。」

早川はそう自分を客観的に見てそう思った。つまりある意味の紳士であった。

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